ビニールマルチを使わない理由

以前、会社でお世話になっていた頃と就農当初は、ビニールマルチを使用していました。


こんな風に高畝にビニールマルチを一枚張るだけで、適度な保水とビニールに当たる太陽光によって地温が上がり、作物の根の呼吸が活発になり、無肥料栽培でも作物がよく育ちます。

また草を抑えられるので栽培管理がとても楽です。

左側がマルチなし、右側がマルチありです。

ナスの生育仕方も収穫量も全然違いました。

マルチを使用すると収穫量は何倍にも増えます。

実家の父が家庭菜園で無肥料のミニトマトの場合、収穫量がどれくらい違うか比較しました。

その年、マルチありのトマトは、マルチなしに比べて約20倍の収穫量があったそうです。


今年、うちの畑に家庭菜園区画を作って、もう一度、ナスで栽培実験してみました。

写真はありませんがやはりマルチを張った方が、マルチなしのナスよりも、生育も収穫量も良い結果となりました。

もう上の写真でも分かるように枝ぶりから全然違います。

 

農業経営を考えると非常に有効なビニールマルチ、うちでは使っていません。

理由は、いくつかあります。

 

就農当初、2つの畑をお借りすることが出来ました。

どちらも10数年耕作されていなかった土地で、ひとつは樹があちこちに生えているくらいでした。

そのどちらの畑からも開墾、畝立て中に沢山のビニールマルチ片が出てきました。

 

10数年、耕作放棄されていてもビニールは、土に還らないんだなと改めて実感しました。

どんなに気をつけていても、マルチを剥がす時に、細かいビニール片が取りきれずに残ってしまいます。

小さな破片まで全部取りきるのは、自分には無理だと感じました。

 

土や自然に申し訳ないような、後ろめたい気持ちで、心情的にすっきり割り切れず気持ちが悪く、辞めたひとつの理由です。


ただし農業経営を考えるととても有効で、またその作物だけを見ると、とても良い資材です。

マルチを張って伸び伸び野菜が育っている他の方の畑を見るとそれはそれでやっぱり良いなぁと感じます。

 

 

もうひとつの辞めた理由は、マルチを使用しないで収穫量が何分の一、何十分の一になっても、適度に野草と共生した方が、作物の味が複雑で深みのある味わいになるからです。

はっきりとした理由は分かりません。

作物の根が多様な野草の根と共生・競合し、それぞれの植物に共生・寄生する菌や土壌中の菌のネットワークを通じて養分やミネラルなどのやりとりをしているからかな、などと想像しています。

 

今年の実験でもマルチありのナスは見た目もとてもきれいで柔らかく美味しそう。

マルチなしの野草と共生したナスは、少し硬く、重い感じ。

そして切るとマルチありのナスは果肉が多く種が少なく、マルチなしのナスはとても種が多いのです。

明らかに見た目や触った感じには、マルチありのナスの方が美味しそうなのですが、食べてみるとマルチなしの野草と共生したナスの方が濃厚なはっきりとした旨みがあるのが分かりました。

 

そんなわけで、私たちの畑で育ってくれる野菜たちは、家族や大切な人たちが、食べて元気になってくれるような命の詰まった野菜たちに育ってくれることを願い、例え小ぶりでも見た目がイマイチでも、野草たちと共生・競合しながら野菜自身の力で精一杯育った野菜たちなのです。